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【開催報告】第1回 経営者向けイベント「環境・エネルギー対策をビジネスチャンスに ゼロから始める!新事業のつくり方セミナー」を開催しました

第1回 経営者向けイベント
(広島開催)

全2回で環境・エネルギー分野のビジネスプラン作りに取り組む経営者向けイベントの初回、広島開催の部を9月3日、イノベーション・ハブ・ひろしまCamps(広島市中区)で開催しました。今回の講演は宮崎県でかつお一本釣り漁船を操業する有限会社浅野水産の浅野龍昇氏を講師に迎え、漁師が長年かけて培った経験と勘をオープンイノベーションでAI化し、事業承継の課題を解消したケースについてお話しいただきました。後半は参加企業にワークショップで自社の環境・エネルギーに関する課題とじっくり向き合っていただきました。
当日は中電環境テクノス株式会社、広島アルミニウム工業株式会社など7社から12人の皆さまに参加いただきました。

【講演】
「オープンイノベーションは四次元ポケット」 ~ドラえもん世代の事業承継と第二創業~ 有限会社浅野水産 常務執行役員 浅野 龍昇氏

宮崎県日南市は江戸時代からかつお一本釣り漁業がさかんで、近海かつお一本釣りの水揚げでは約30年連続全国1位の漁獲量を誇ります。浅野氏の家業である浅野水産も1967年の創業以来、かつお一本釣り漁法を生業としてきた地場企業の一つです。

先代社長の長男である浅野龍昇氏は国会議員秘書として働いていたため、後継ぎとして船に乗っていたのは次男の貴浩氏でした。かつおの漁獲量は、漁師の腕にかかっています。先代社長は、じきに船を降りるにあたり、経験の浅い貴浩氏と交代することで業績が不安定になることを懸念し、安定した経営のためにも事業多角化が不可欠だと考えました。

浅野氏が議員秘書時代にさまざまな業界、業種と交流する中で実感していたのは、漁業には多くの課題があるにもかかわらずイノベーションが起こりにくいということでした。漁師たちの主戦場は海なので、ネットワークが閉鎖的で陸とのつながりが希薄です。浅野氏はこれまで培ったネットワークを駆使して変革のためのチームを作ろうと考え、2019年に家業に入りました。

「ビジョンや戦略を生み出す際、“課題“にとらわれすぎると視野が狭くなってしまいます。頭を柔らかく、想像力を膨らませて、自分たちの会社がどうなったらワクワクするかを考えることが大切です。難しく考えるよりも、会社の若手を飲みに連れて行って夢を語らせるほうが早いかもしれません」と浅野氏。浅野水産では経営指針を「海業に関わる全ての人たちへウェルビーイングを」と位置づけ、これを軸にビジョンを策定していきました。同社のビジョンは、かつお一本釣り漁業をインテンシブな働き方を求める人たちの職業にすること。ノルウェーやアイスランドなどの漁業先進国の漁師のように、半年の働きで1年分稼ぎ、残り半年は丸々休むようなスタイルの働き方を選択できるようにするというものです。半年間で安定した稼ぎを毎年生み出すために、まずは漁業全体の課題でもある事業承継リスクの緩和にフォーカスしました。

「父が40年で培った漁師の経験と勘をAI化できないだろうかと、思いついたのはテレビドラマ『下町ロケット』を見ていた時のことです。実は漁業と宇宙ビジネスは密接に関わっており、“漁師の勘“は衛星から得られる潮流や水温のデータ、船のレーダーのデータなどに基づいています。船には父の手書きによる操業記録が20年分蓄積されていました」(浅野氏)

2019年には、民間企業のオープンイノベーションプラットフォームを利用し、共創パートナーを募集。50社近くの企業から問い合わせや提案があったといいます。「自社のビジョン・ミッションが明確であったこと、内部リソースの整理ができていたこと、選任担当者を設置したことが、これだけの反響につながった」と浅野氏は振り返ります。

その後、マッチングが成立した都内のデータサイエンス・ベンチャービルダーとAIを開発しましたが、事業承継問題を解決できるほどの精度には至りませんでした。しかし漁業とDXの共創は話題を呼び、メディアにも大きく取り上げられました。注目が集まったことで、取り組みに興味を持つ若い漁師が増えました。デジタルネイティブ世代の協力で、AIやDXの使用感のフィードバックを得ることができたといいます。

それを踏まえて2021年に宮崎県のビジネスマッチング事業に参加、2社のスタートアップ企業とタッグを組み、船内の映像や計器のデータを収集して衛星通信に最適化させるソリューションを考案しました。これにより、引退した先代社長が陸でリアルタイムのデータを見て、瞬時に船に指示を送ることができるようになったのです。世代交代があった2019年以降低迷していた業績は、システムを実装した2023年に急激に伸び、過去最高売上高を記録しました。また、暑いエンジンルームでしか確認できなかったデータをタブレットで確認できるようになったため、船員の労働環境改善にもつながったそうです。現在もオープンイノベーションを活用して商品開発や海外進出に着手しているところです。今後も浅野氏が掲げるウェルビーイングの実現に向けた変革は続きます。

講演後、会場からの「一番大変だったことは」という質問に対して、「両親の説得に苦労しました。昔の人ですからAIといってもピンと来ない。2000万円のAI開発費用に懐疑的でした。資料を見せながら丁寧にプレゼンして、どうにか納得してもらいました」と回答されました。

【ワークショップ】

後半のワークショップでは、参加企業に自社課題の棚卸作業に取り組んでいただきました。当協議会のメンターやスタッフによるヒアリングを交えながら、業界全体の課題、自社の強みやできそうなこと、目指す姿などについてワークシートに言語化していきました。

最後に当協議会会長の叡啓大学教授・早田吉伸氏があいさつし、「今日のワークショップで棚卸した内容を、ぜひ自社に持ち帰って社内の方にも意見を聞いてみていただければと思います。経営者とは違った観点の意見も大切です」と呼びかけました。

次回のワークショップは2025年1月28日(火)に広島市で開催し、環境・エネルギー分野の新事業のビジネスプラン作りに取り組む予定です。希望者は、それまでに専門家による個別面談を受けることができます。

ひろしま環境ビジネス推進協議会とは

広島県が2012年4月に設立した協議会です。企業間連携の活発化や海外展開の促進等を通じて、持続可能な社会の実現に貢献するビジネスをグローバルに展開できる企業群を育成することを目的としています。
協議会の活動の一環で取り組むコミュニティー組織 「SCRUM HIROSHIMA」では、多様なステークホルダーがつながり、新たなビジネスの可能性を探索いただく場として、定期的なセミナーや、交流イベントを開催します。

【役  員】
会長 早田 吉伸(叡啓大学 ソーシャルシステムデザイン学部 教授)
【事 務 局】
広島県商工労働局イノベーション推進チーム
【会員一覧】
ひろしま環境ビジネス推進協議会・参加企業一覧
【協議会サイト】
https://hiroshima-greenocean.jp/


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