【講演1】
「終わらない服をつくろう。」
青山商事株式会社 長谷部 道丈氏
福山市に本社を置き、全国に紳士服販売チェーン「洋服の青山」を展開する青山商事株式会社。まだ「サステナビリティ」「EGS」といった言葉がなかった98年頃に、不要な衣類を回収する下取りサービスを全店舗で開始しています。20年にはエコマーク認定を取得し、エコマークアワード2020「優秀賞&エコ・オブ・ザ・イヤー」をW受賞。全店舗で再生材を使ったごみ袋への切り替え、使えなくなったプラスチックハンガーのペレット化、植林活動などの環境対策に取り組んできました。
創業60年を迎えた昨年には、全店にリサイクリングボックス「WEAR SHiFT(ウエアシフト)」を設置し、年間350トンの衣類を回収。専門業者に分別を委託し、古着として活用するほか、活用できなくなった衣類は素材として再生するサイクルを確立しました。ウール素材の衣類は毛布へ再生して災害のあった自治体に寄贈するなど、社会貢献にもつなげています。
「本社と全店舗が一枚岩となって取り組むことが大切です。店単独、本社単独で取り組んでいた頃は、理解を得られず苦労することもありました」と長谷部氏。
同社は、環境や社会貢献に対する考え方を明確に表明し、プレスリリースなどを通じて広く発信することで社内外に取り組みの輪を広げていきました。「SDGsやESGを扱うメディアも増えています。それがインターネットのニュースなどに転載されれば思わぬ企業から声がかかったり、テレビ取材の依頼があったりする。社会から反響や評価を得ることで社員たちも協力的になり、新たなビジネスの創出もしやすくなります。」(長谷部氏)
またエシカル消費について、アンケートで60代以上の消費者の多くは価格が上がっても購入すると答えた一方、若年層はSDGs教育を受けているにもかかわらず購入に消極的であることに言及。「消費者の意識を変えていくには、他社との協業が不可欠です。衣食住にかかわる企業が手を取り合い環境への取り組みを進めていくことで、5年後、10年後にはそれが当たり前になる。消費者に受け入れられるよう、慎重に取り組んでいきたいと思います」と前向きな展望で締めていただきました。