【講演1】
「茶粕(廃棄物)を茶殻(有価物)へ アップサイクルの取り組み」
株式会社伊藤園 中央研究所 佐藤 崇紀 氏
ペットボトル飲料「お~いお茶」で知られる伊藤園は、生産工程で排出される茶殻が1年間で東京ドーム約一杯分(約5万8000t・2022年)出る実態を注視するところからスタート。茶殻にはカテキンなどの有効成分が残っており消臭・抗菌効果があることから、「より価値を高めるアップサイクル」をテーマに取り組みました。水分を含み、高温になると腐敗しやすく、乾燥させるには燃料費で高コストになる課題を独自の輸送と保存技術で解決したことで、特性を生かした高付加価値製品、約100種類の創出に成功しています。
例えば内側に茶葉を配合して旅館や飲食店で採用された「さらり畳」、建築材製造会社と共同開発した壁用タイル材、スポーツメーカーと開発した茶殻配合樹脂を使って表面温度を下げる人工芝などの事例も紹介されました。
会場からは「共同開発のきっかけ」について質問が出され、「近年では、飲料ボトルに書いてあるお客様相談室に問い合わせをいただくことも増えてきました」と佐藤氏。さらに「製品化後に販売への意欲を共有することが重要」と、成功の秘訣が語られました。
【講演2】
「アヲハタのサステナブル経営について~立地に配慮した環境経営からサステナブル経営へ」
アヲハタ株式会社 経営本部 宇都宮 勝博 氏
老舗ジャムメーカーとして知られるアヲハタは、原料重視の観点から産地の竹原市で創業。「瀬戸内海国立公園内に立地する会社として、工場排水などの厳しい水質基準を満たすために、早期から環境に対する意識が高かった」と宇都宮氏。創業時から製造していたみかん缶詰では、製造工程で出る外皮や残った実、内皮まで食品原材料として収益化し、排水処理まで含めたリサイクルシステムが確立していたことを紹介。
現在は、ジャムの製造工程で、殺菌後に製品を冷やした冷却用水を循環利用するため、地下100mの地中冷熱を利用する、環境に優しい冷却システムを導入。さらに、広島県のカーボンリサイクルプロジェクトで、空気中のCO2をイチゴ農場の促成栽培や収量アップに活用する取り組みにも触れ、「イチゴ栽培での取り組みは弊社が先駆なのでさらに力を入れたい」と話されました。
会場からは、排水冷却リサイクルの他の活用方法について質問があり、「実現はしていませんが、地熱冷却を社内冷房に生かしてエアコンの電力消費を減らしたい」と回答されました。
【講演3】
「規格外品や副産物は宝の山!サステナブルな価値の創造」
大成農材株式会社 代表取締役社長 杉浦 朗 氏
大成農材は、魚の水産加工で廃棄された残渣による有機肥料製造で1985年に創業。自社でミニトマトを栽培・販売し、規格外のものをアップサイクルしてトマトジュースを商品化しています。
作物栽培を始めたのは、肥料は販売時に他との差別点を伝えるのが難しいことから、良い作物ができれば良さが伝わるのではないかと考えたのがきっかけでした。試行錯誤を経て2018年から10アールの自社農園を運営。2年で軌道に乗り、高糖度のミニトマト収量10トンを達成しました。一方、おいしい状態で出荷できるように完熟させるため「裂果」が2割でき、これを活用したいとトマトジュース製造を開始。販売も好調で、年間製造能力4000本、定価で完売すれば売上高800万円になる予定です。
「試行錯誤はありましたが新事業が実現したのは、トップダウンでまず挑戦したから」と杉浦氏。会場からは、トップダウンに対する従業員の反応について聞かれ、「当初、全員が協力的だったわけではないが、試作などの際に前向きだった社員と組んで進めることで事業化が実現した」と、自社の新事業創出に至る課題や解決策などについて回答いただきました。
講演後のワークショップでは、自社で発生する廃棄やロスから価値を生み出すアイデアをグループで話し合いました。他の参加者の視点から、気付きや思わぬ活用例などが発表で共有されました。
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