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【開催報告】「取引所トップが語る!
環境経営の潮流とビジネスチャンス」
第3回 経営者向けセミナーを開催しました。
 第3回経営者向けセミナーを1月23日、iti SETOUCHI(イチセトウチ・福山市)内コワーキングスペーストビオで開催しました。基調講演として日本取引所グループCEOで広島県出身の山道裕己氏が世界的な環境経営の潮流などについて話した後、福山で環境事業を進めるエフピコ、坂本デニム、寺田鉄工所の3社でトークセッション。取組内容や課題などを深掘りし、環境関連の事業創出について経営者同士、気付きや学びを得ながら交流を深めました。
 会場には、アシードホールディングス株式会社、株式会社アサヒテクノリサーチ、CIA株式会社、株式会社ペンストンなどから約30名に出席いただきました。また当日は福山大学都市経営学部の学生8名も聴講されました。皆さま、ありがとうございました。

【基調講演】 株式会社日本取引所グループ
取締役兼代表執行役グループ最高経営責任者(CEO) 山道 裕己 氏
「環境経営に関するグローバル動向と取引所の取組み」

  山道氏は、最近のグローバルなESG関連の動向や、それを踏まえた取引所の取り組み、また今後の流れについて話されました。
 近年、金融界の投資判断の中で聞かれるようになった「ESG投資」は、特に気候変動への関心の高まりから注目されています。日本でも2050年温室効果ガスをゼロにする方針が出され、昨年10月には岸田総理が公的年金もESG投資にコミットするとの発表もあって、2024年は大きなお金がESG投資に向かうことが伝えられました。
 さらに参加者に向けて「特に温室効果ガスについては大企業だけでなく、取引先を含むサプライチェーン、バリューチェーン全体の排出量の提供が求められ、多くの人が想像するよりも幅広く準備・対応が必要になる」との考えを話されました。

 日本取引所グループ(JPX)の活動については、まず市場運営者として、上場企業のホームページのESG情報にリンクできる『JPX・ESGリンク』を開設して情報開示をサポートしていること、さらに一企業として、2025年3月までにグループ全体で消費する電力を100%再生可能エネルギーへ切り替え、カーボンニュートラルを達成する仕組みについて紹介されました。
 「環境問題は社会貢献活動として取り組むべきもの、むしろコストになると考えられていたが、ESG投資という概念のおかげでリターンがあることがわかり、企業の持続的な成長や企業価値の向上につなげて説明する企業が増えています」と山道氏。「社会貢献だけではなく、企業がより持続的に成長していくための戦略だと思います」と伝えられました。

【トークセッション】  後半は、地元で環境事業を進める企業3社に登壇いただき、各社の紹介の後、取組内容や課題などについて意見交換していただきました。

■ 参加者

  • 株式会社エフピコ
    サスティナビリティ推進室 ジェネラルマネージャー 冨樫 英治 氏
    ◆ 株式会社エフピコ ◆
    1962年創業、簡易食品容器(食品トレー)の製造。1990年代、発砲容器のフロンガス使用やごみ問題による不買運動を回避しようと、創業者が「本業でできること」を合言葉に、スーパーなどでトレーの自主回収、リサイクルを開始した。各地のトレー選別、圧縮工場で障がい者の雇用機会を創出し、12.6%と高い雇用率を実現する。

  • 坂本デニム株式会社 代表取締役 坂本 量一 氏 ◆ 坂本デニム株式会社 ◆
    1892年創業。染色の町・神辺町(福山市)で、藍染を原点にインディゴ染色に特化した染色工場。2008年ごろ燃料代の高騰を機に取り組んだ省エネ・省コスト対策が環境対策につながった。染色の洗浄工程で温水と洗剤の使用を止め、伝統産業における脱化学薬剤、CO2削減を実現する。生産過程で出る汚泥を生ごみとともに減容化させ堆肥化も行う。

  • 株式会社寺田鉄工所 代表取締役 寺田 雅一 氏 ◆ 株式会社寺田鉄工所 ◆
    1917年創業。プラント関連設備メーカー。CO2排出が多い火力発電所、製鉄所などの設備が事業の中心だったことから、サイドビジネスとして再エネ関連設備を手掛けた。太陽熱利用の冷暖房除湿の空調システムはZEB(ネットゼロエネルギービル)のオフィスビルなどに利用されている。業務用を中心に太陽熱利用機器のさまざまな実証実験も進める。

――環境事業は実際にビジネスとして利益を上げられますか? 冨樫氏:発砲トレーは新品と再生品の価格は同じ。石油化学製品なので原油価格が上がればエコトレーの方が利益は多くなります。近年、環境意識の高まりから、CO2排出量を30%削減できるエコトレーの引き合いは多いです。ただ現状としては、原料の使用済みトレーは生活者の協力がないと集められないことがあり、すべてに提供できない状況が続いています。

坂本氏:着手した十数年前から環境配慮を訴えていましたが、反応はありませんでした。それが数年前から海外の展示会で「環境配慮のデニムしか要らない」とハイブランドのお客さまに求められるようになり、やっとビジネスにつながりました。そこから近年、国内でも認められるようになってきました。

寺田氏:当初6年は赤字事業でした。家庭用温水器マーケットを狙ったのですが、既に市場があって価格も安かったので、利益が出なかった。家庭用から撤退して業務用に特化してやっと利益が出るようになりました。ほぼ誰も参入していないマーケットだったのが要因だと思います。規模が大きいので額は変動しますが、ずっと伸びています。

――環境をビジネス化する上での課題は? 冨樫氏:装置産業は初期投資額が大きい。トレーの価格は1枚4~5円なので投資回収にはすごく時間がかかる。不買運動に対する企業防衛策としてリサイクルに取り組もうとした約30数年前は、トレー回収はゴミ回収と同じとされて銀行の融資も難しかった。こうした逆境下でもトレー回収・リサイクルを決断できたのはオーナー企業だから、オーナーの決断があったからこそだと思います。

寺田氏:SDGs、ESGなどが話題に上るようになったが、日本では環境より経済を中心に考える企業が圧倒的に多い。それに対してヨーロッパなどでは化石燃料より再生可能エネルギーを使った方が安い社会システムが導入されている。日本も、炭素税、カーボンクレジットが2028年から導入予定。導入されて初めて海外に追いつくのだろうか、という現状が課題だと感じている。

坂本氏:環境への取り組みやビジネスは継続も大事。当社の場合は経営層から現場の従業員まで世代交代、引き継ぎが必要で、職場環境改善にも取り組んでいる。その中で、社員の家庭の生ゴミを持参してもらい、排水汚泥と混ぜてたい肥化する事業も行っています。社員が家に生ゴミを貯めずに済み、たい肥を福山の緑化活動でバラの花壇を作るのに利用しています。

 トークセッションではこのほか、環境事業への取り組みが人事募集に役立つかなどについても意見交換が行われました。 その後のワークショップでは、廃棄物の活用アイデアについてグループで意見を出し合い、環境関連の事業創出への機運を高めてもらいました。

次回は2月6日(火)に第12回セミナー「廃棄されるものが新しいカタチに!?価値ゼロから収益を生み出す」を開催します。 次回のセミナーの詳細はこちら
  

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