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【開催報告】「オープンイノベーションの先導者×ユニコーン企業 “石から作る新素材”で世界を拓く~環境領域におけるビジネスの広げ方~」
第9回セミナーを開催しました。
 企業間交流を深めるコミュニティイベント(第9回)を11月29日、広島市中区のイノベーション・ハブ・ひろしまCampsで開催しました。今回のテーマは「オープンイノベーションの先導者×ユニコーン企業 “石から作る新素材”で世界を拓く~環境領域におけるビジネスの広げ方~」。当日は株式会社石﨑ホールディングス、株式会社シンギなどから出席いただきました。皆さま、ありがとうございました。

【トークセッション】 テーマ:環境・エネルギー分野で新規事業をどのように生み出し、拡大させていくのか 登壇者:株式会社TBM 大場 健太郎 部長 / 株式会社eiicon 中村 亜由子 社長
ファシリテーター:広島経済レポート 梶原 恭平 氏
 新素材LIMEX(ライメックス)で環境分野の最先端を走るユニコーン企業、株式会社TBM(東京)の大場健太郎部長と、東洋経済「すごいベンチャー100」2023年版に選出のオープンイノベーション総合支援会社、株式会社eiicon(エイコン)の中村亜由子社長が登壇。環境ビジネスを取り巻く市況や、スタートアップ企業とオープンイノベーションを進めるポイントについて掘り下げました。

◇環境ビジネス領域の注目度と市場動向 -今の環境ビジネスの市場感をどう捉えていますか。 大場:拡大を実感しています。環境系は以前、窓際の分野でしたが、今は日本でも環境に対応しないと立ち行かないところまできている。サーキュラーエコノミー(循環経済)も含めて環境ビジネスで価値を生める状況にあると思います。
中村:オープンイノベーションでも環境系のプロジェクトが非常に増えています。海外に比べると法律や規制などでやりづらい部分もあったのですが、2050年カーボンニュートラル実現の目標が国から出たことで、一気に動き出した感があります。実際に、環境系では二酸化炭素の排出量に関する案件が増加傾向です。

-これから市場はどう推移していくでしょうか。 大場:多くの企業がまず2030年に目標を設定していますので、そこに向けて市場が拡大しています。そして、2030年を過ぎると次の目標となる2050年に向けてさらに加速していくと思います。
中村:環境分野の課題は1社単独で解決するのは難しいことが多く、オープンイノベーションが主流になるだろうと思っています。今やっている事業の収益が落ちたとしても、抜本的に事業内容を変えないといけないジレンマに陥る時期が来る可能性もあります。それを効率的に、スピード感を持って解決できるのがオープンイノベーションや技術提供だと思います。

◇環境領域の事業立ち上げと拡大のポイント -環境系のオープンイノベーション支援ではどのような案件がありますか。 中村:カーボンクレジット分野でのスタートアップとの連携、フードロス対策などは動きが出てきています。環境に良いプロダクトを作るような分野は、大学などの研究機関や技術を持つスタートアップが先行して取り組んでいます。また、防災や自動車産業など、別の方面から環境分野に事業転換されているスタートアップは結構あります。
-TBMさんも自社での素材開発からのスタートです。ユニコーンまで事業拡大されたポイントは。 大場:一つは市場の捉え方でしょうか。単純に素材を売るのではなく、紙やプラスチックの代替品にすれば範囲は広がる。その大きな市場を狙っていることを、投資家などに向けて話しています。あと、LIMEXのポテンシャルをさらに発揮するために、資源循環の取組を進めています。事業展開とシナジーを生む周辺領域を戦略として持ちながらやってきたのも拡大のポイントだと思います。

 LIMEXを使用した製品はもっと価格競争力を高めていかなければいけませんが、用途によっては従来素材の製品と比べても同等の価格で提供できるケースも増えてきています。例えば、飲食店のメニュー表などは従来の紙にラミネート加工すると紙代のほかにラミネート代や人件費がかかります。一方、耐水性のあるLIMEXだと全体でコストは下がる。こうしたコストダウンや、環境配慮の提案の両軸でやっています。もう一つ、企業に環境価値を買ってもらい、従業員などに使ってもらって見える化する、さらには会社のブランディングに使うところまで配慮した提案がわれわれの強みだと思います。
-オープンイノベーションは立ち上げと事業化、どちらが向いていますか。 中村:事業化の方です。社内では1、3、10、30、100(億円)という数字を意識しており、それぞれの売り上げ規模で戦略を変えるべきであると考えています。この中でオープンイノベーションが登場する最初のタイミングは0から1か、3億円から10億円に伸ばすところ。ここで例えば希望する技術を持つスタートアップとコラボすると、スピード感をもった成長を実現しやすいです。結果的にかけるコストが少なく、実入りも早いというメリットがあります。

◇パートナー選びと今後の勝ち筋 -一般的に新事業をつくるとき、協業を働きかける前に、社内検討に時間を使うことが多いと思います。御社はいかがですか。 大場:タイミングとして、うちは結構早めにお声掛けをしていると思います。ベンチャーは社内のリソースが限られていますから、「いくつか聞いてみましょう」というところから始まる。 -中村社長は、環境分野で社外パートナーと事業を成功させるポイントは何だと考えますか? 中村:ある領域に参入するとき、まず自社の強みはこれだというポイントをテキスト化しておくだけで、その後のステップは変わると思っています。その上で、そこに合うパートナーを探していく。あとは複数の会社と会い続けることでしょうか。

-うまくやっている企業にはどんな特徴がありますか? 中村:会社として投資できる金額を決めていることです。すると、担当者などに案件を任せることもできますし、決裁を含めて責任をもって進めてもらうことができ、スピードも早くなります。 -勝ち筋という面で、環境でチャンスがある領域があれば教えてください。 大場:DXを活用した、資源循環とレガシー(伝統的な)産業との組み合わせは一つのポイントかと思います。ITなどと組み合わせながらレガシー産業の流れを変えていく。非常に伸びる、やらなければいけない部分だと思っています。サーキュラーエコノミーにも、透明性が増す中でDX的なものが入ってくると思います。
中村:TBMさんがユニコーンたる由縁にも少しリンクするんですが、やはり技術を持っているところは強いと思います。社会実装を想定する大学の研究室の先生と経営のノウハウでコラボというのは、今後増えていくと思います。あとは海外、距離的に近く人口も増えていく東南アジアも注目です。環境系のものが輸出され、現地とのコラボが増えるかもしれません。

【サーキュラーエコノミーのミニ講義・セッション】 株式会社TBM 大場 健太郎 部長

 サーキュラーエコノミーの市場は欧州を中心に大きく伸びており、2030年までに4.5兆ドルになると言われています。国内でも現在は脱炭素関連が伸びていますが、2050年に向けては、資源循環関連が伸びていくと言われています。

 国内では現在、廃プラスチックが年間約800万トン廃棄されています。その約7割が焼却処理され、内訳は8%が単純焼却、62%が焼却熱を温水プールの熱源への利用や発電などに利用されるサーマルリサイクル。一方で、廃プラスチックを新たな製品の原料に使うマテリアルリサイクルや、廃プラを元に化学合成した物質で新たな製品を作るケミカルリサイクルは少ない状況。海外では、製品に再生プラスチックを入れないと課税する法律があり、主要メーカーが再生プラスチックを増やす目標を掲げていることも紹介し、「資源が乏しい日本ではマテリアル・ケミカルリサイクルをどう増やすかがポイントになり、そこにビジネスチャンスもある」と大場氏。

 また、同社の取り組みとして、雑多なプラスチックを自動で仕分けするリサイクルプラントの運営や雨傘などの再生材を使った製品化の取組、またLIMEXの使用で資源循環をサポートし、効果を見える化して社員の意識醸成やブランディング、PRに使えるサブスクサービスなどを具体例として紹介。ミニセッションで、こうした環境面でのブランディングや取組が人材採用にも影響することなどにも触れられました。

 トークセッションやミニ講義を通して、参加者からは環境ビジネスの市場環境やオープンイノベーションの考え方が具体的によく分かった、ポイントなどが参考になったなどのご意見を頂きました。

次回は12月19日(火)にオープンセミナー 「グリーンモビリティ最前線~100年に1度の変革期を ビジネスチャンスに~」を開催します! 次回のセミナーの詳細はこちら
  

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