【講演】
株式会社マザーハウス 山口絵理子社長
「途上国から世界に通用するブランドをつくる~社会性とビジネスを両立する第三の道を探して~」
山口社長からは、文化や環境などのストーリーを付加して商品価値を高めるブランド作りや新規事業創出についてお話しいただきました。
途上国6カ国に生産拠点を作り、日本と海外の44店舗で販売。23年春にはシミントひろしまに中国地方初出店したマザーハウス。山口社長が大学時代、米国・国際機関でのアルバイトをきっかけに、支援の現場を見たいとアジア最貧国だったバングラデシュを訪ねたことが創業につながりました。
現地で暮らす中で、多額の支援をしているはずが必要な人に届いていないこと、また多くの人が援助より働きたい思いを持っていることを知った山口社長。麻の一種・ジュートという安価で優しい質感のある繊維に出合い、この伝統素材を使って「かわいそうだから」ではなく「かわいい、かっこいい」で買われる、「世界に通用するブランド」を作ろうと、事業化を決心することになりました。
生活や就業の習慣が違う途上国での事業運営は、「正直、何度もやめようと考えた」という苦労の連続でした。あるとき日本人顧客による工場見学ツアーがあり、工員たちがカバンを使う人の姿を初めて目にしたことが意識を変え、使う人の身になって品質の良い製品を作ろうという前向きな変化をもたらしたそうです。
現地にあるものを生かした製品づくり、職人の育成、工場運営のノウハウが、バッグからアパレル、ジュエリーへと、アイテムと生産国を広げていったと、新規製品事業の立ち上げ、拡大についても語っていただきました。
【トークセッション】 地元企業から、デニムメーカーの篠原テキスタイル株式会社の篠原由紀社長、カンボジア産生胡椒の塩漬けなどの販売を手掛けるAKO株式会社の速水亮子社長をゲストスピーカーに迎え、山口社長とトークセッションしていただきました。
◆ 篠原テキスタイル株式会社(写真左)◆
篠原テキスタイル株式会社(写真上)
デニム生地メーカー。1907年、福山市で創業。デニム生地をアメリカやヨーロッパにも輸出する。環境配慮型事業として、サッポロビールとの協同で、ビール製造の原料の一つ、ホップの搾りかすから糸を作った「黒ラベルシーンズ」製造、生地の残糸で作る靴下などアップサイクル品製造にも取組む。
◆ AKO株式会社(写真右)◆
AKO株式会社(写真下)
カンボジア商品の輸入販売会社。速水社長は、経営コンサルなどを経て2014年に起業。翌年、カンボジアでスパやカフェなど、観光客向け施設を開業。カンボジア産の食材販売事業として、生胡椒の塩漬けの日本での販売事業を始める。さらに、自らの子育て経験を生かして、母親の託児サービス付き交流拠点を運営。
篠原社長はビール会社とのコラボ素材や、生地を織る際に出る残糸などでアップサイクル品製造にも取り組んでいることから、「新製品作りの際に素材を選びの視点やコツはありますか?」と質問。山口社長はジュートのカバンを作った原点を振り返り、「途上国では土産品店を回って情報を得ることから始めます」と回答。その傾向として「現地ではありふれていて注目されていない素材に引かれる」と、新商品開発、製造拠点づくりにつながった経験などを語られました。
速水社長からは事業で決断を迫られる場面について、「新商品など最終決定の場面では、自分またはチームのどちらで決定するのですか?」と問いかけがありました。山口社長はデザイナー兼経営者の立場では客観視の大切さが前提とした上で、「挑戦する強い気持ち、ある程度周りを無視して攻めないといけないときもあります」と回答。さらに「店舗が増えると、自分で全ての市場の状況を把握するのは難しく、チームの意見が重要になります。多くの情報を得ながら、気配り、目配りをしながら決定しています」と語られました。
参加者からは、3名のリアルな話が聞けて良かった、興味深かったなどの声をいただきました。
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