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【開催報告】「どうする電力。再エネ活用の
GX戦略~地場企業3社の取組から学ぶ~」
第5回セミナーを開催しました
 企業間交流を深めるコミュニティイベント(第5回)を8月23日、広島市中区のイノベーション・ハブ・ひろしまCampsで開催しました。今回のテーマは「どうする電力。再エネ活用のGX戦略~地場企業3社の取組から学ぶ~」。株式会社ウエストエネルギーソリューションの営業企画本部の池田祐一氏による基調講演に続き、イームル工業株式会社の山口克昌社長、中国木材株式会社管理部の松岡秀尚部長そして池田氏が登壇。経営におけるGXの取組の必要性と、太陽光、小水力、木質バイオマスの再生可能エネルギー発電を事業化する県内企業の取組について学びを深めました。
 会場には株式会社コーヨー、三泰産業株式会社、中電環境テクノス株式会社、中国電力株式会社などから20名、オンラインでは24名の皆さまに参加いただきました。ご参加、ご視聴、ありがとうございました。

【基調講演】 電力事情の実態とGX(脱炭素経営)の本質
株式会社ウエストエネルギーソリューション営業企画本部 池田 祐一 氏
 池田氏は冒頭で「現在の電力のひっ迫状態はいつまで続くのでしょうか?」と問いかけ、パリ協定後、中国でのLNG(液化天然ガス)パニックにロシアのウクライナ侵攻が追い打ちをかけ、国内では2022年3月の福島県沖地震に起因する電力ひっ迫、円安などが大きく影響していることが伝えられました。23年2月資源エネルギー庁の調査では日本のエネルギー自給率は11.3%で、「島国の日本は高いコストをかけてエネルギーを買っているため、海外で起こる外的要因で電力の供給が左右されてしまいます」。さらに原発も建て替えなどが必要、再エネは送配電網などの整備がこれからなどの現状から、当分の間、電力ひっ迫・高騰の劇的な改善は難しいという見方を示されました。
 こうした中、「近年、金融機関が融資の際、サプライチェーンを含めた総排出量削減の取組が求められる時代になっています」とメガバンクなどのESG金融や脱炭素経営の拡大について紹介し、政府が50年に国内のCO2排出量を実質ゼロにするため企業のCO2排出に課金する「カーボンプライシング」導入についても説明。「中国は再エネへの取組が日本の約23倍、特に風力発電は日本の160倍。これは国益に直結するからです。経営目線でGXは利益に直結することに気づいてほしい」と強調されました。
 現在、若者が就活で会社を選ぶ基準で「社会貢献度の高さ」を重視するなど、社会や事業環境は変化しており、「環境対応はコストではなく収益を上げる手段。収益を生み出せるからこそ温室効果ガス削減に継続的に取組める。つまり経営で間接利益、直接利益を得続けるための無視できない手段が脱炭素経営の本質です」と池田氏。世界的なエネルギー事情からGXへの取組の重要性まで、学びの多い講演となりました。

基調講演の後、県内で再エネ分野の発電に取組む3社に、再エネやその市場について講演していただきました。

【事業紹介1】 小水力発電の現状とこれからの期待
イームル工業株式会社 代表取締役社長 山口 克昌 氏
 1947年「電力で戦後の日本にあかりを灯したい」と創業、東広島市を拠点に75年間水力発電設備一筋に取組んできたイームル工業。水力発電というとダムをイメージしがちですが、同社が手がける小水力発電は河川から水路で水を引きこみ、地形的な勾配の落差を利用して水車を回すシステムです。「現在、国内の小水力発電の調査済み未開発地点のうち、小水路を利用した5メガワット(MW)以下の発電ができる箇所だけでも、合計すれば原発4基分の発電の能力があります」と小水力発電のポテンシャルを説明されました。
 同システムは、一度設備を備えると50年の稼働が見込める上に、安定的に供給ができるのが強み。一方で山間地に建造するため土木工事のコストが高く、事業着手から稼働まで約7年と長期になるのが課題ですが、「日本の山間地形が生かせる上に、エネルギー自給率アップに貢献できる。調査済み地点がある自治体などのカーボンニュートラル施策への提案もしたい」と山口氏。
 会場からは初期投資額について質問があり、「例として1000kWで安くて12億円、山間の奥地で20億円。太陽光などと比べて高額だし、20年で投資回収もできませんが、ヨーロッパなどでは100年間稼働している所もあり、投資を長期で考える視点もあればいいと思います」と回答されました。

【事業紹介2】 木質バイオマス発電の取組
中国木材株式会社 管理部部長 松岡 秀尚 氏
 創業は1953年、住宅の構造用部材の製材・加工・販売を主事業とする中国木材。「年間でベイマツ、国産合わせて170万立方㍍の木材を販売。これは約43万炭素トン(CO2換算で157万トン)を空気中に排出せず固定(木に含む)でき、約58万世帯の年間CO2排出を防いでいることになります。国内で自社林10,699haを保有し、年間9.4万CO2トンを固定。年数がたつと吸収量が減りますから伐採、植林、育林のサイクルを実践しています」と環境効果について報告。さらに全国の工場で屋根に太陽光発電設備を設置していることも紹介されました。
 続いて木質バイオマス発電の市場と展望について説明。現在全国で801基のバイオマス発電設備が稼働し、発電量で木質バイオマスが8割弱。同社は5カ所8基のバイオマス発電所を持ち、2025~26年に岐阜、茨城、秋田の3工場を稼働させて年間29,930kW、130億円の売上高を計画しているそうです。木質バイオマス発電は燃料の調達や輸送コストの割合が大きく、「日向工場(宮崎)では大型製材・加工工場と大型木質バイオマス発電所を併設。製品の製造・出荷とバイオマス発電をほぼ同一敷地内で行うことで大幅なコストダウンを図ります。今後作る工場はこの形にする予定」と松岡氏。また、発電燃料の2%の焼却灰は産業廃棄物ですが、カリウムの含有量が多いのを生かし、20年から肥料への活用を開始したそうです。

【事業紹介3】 ウエストサステナブルスタンダード(太陽光発電)
株式会社ウエストエネルギーソリューション営業企画本部 池田 祐一 氏
 創業から42年、現在まで太陽光発電システムで6,800カ所、280万kWの実績。商品開発から仕入れ、調達、設計、施工、O&Mまで行う太陽光唯一の上場企業で、これまで原発3基分の太陽光エネルギーを作ってきたと池田氏。独自の設備として24時間365日の監視センターを持ち、緊急時対応もシステム化しています。「これが海外(タイ)で大手上場企業の契約をもらっている最大の要因だと思います」。このほかAIドローンによる点検など購入後の継続的な安心・安全の仕組みが大きな強みと話します。
 加えてスタートアップのパワーエックスや、大手電力会社、大手ガス会社などほんの数年前は再エネとの業務提携などありえないと言われていた企業との提携事例、売電しない再エネ、発電事業として三菱商事、JERAなど大手企業に卸す契約事例なども紹介されました。「一番大きいのは供給力。太陽光も明確にエネルギーとして計算されるようになった。これはとても大きな変化だと思います」。
 最後に会場から、太陽光パネルの廃棄について質問が出ました。同社は有害物質を含まずほぼ100%リサイクルが可能なものを使用していること、また現在一般に使われているパネルは産業廃棄物として処理する必要があることなどを説明されました。「太陽光発電にはいろいろな議論もありますが、法人ではもう家電のようにあって当たり前となりつつあることを考えてみてほしい」と話されました。

次回は「経営者向けイベント」として9月12日(火)、福山からグローバル企業に成長した株式会社キャステムの戸田拓夫社長を招き、「行列ができる鋳物屋~3K 職場、新卒入社希望者ゼロから1000名へ~」を開催予定です。
次回のセミナーの詳細はこちら
  

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