【実施報告】令和6年度広島県海外スタートアップ等
連携実証プロジェクト創出事業成果報告会を実施

2025年3月5日に、今年度広島県海外スタートアップ等 連携実証プロジェクト創出事業の成果報告会を実施しました。9月に選定された3社の支援対象企業から、東南アジアのスタートアップとの連携創出の取り組みについてプレゼンテーションを行いました。特別講演には、本事業で清水化学株式会社と連携したマレーシアのスタートアップADA Biotech社が来日し、登壇。その後、選定企業3社を交えたパネルディスカッションを行い、本プログラムでの学びについて共有いただきました。

<実施概要>

・タイトル:「東南アジアのスタートアップと創る新規事業」
・日 程 :2025年3月5日(木) 15:00~17:00
・場 所 :TKP広島本通駅前カンファレンスセンター 6階 ホール6C(広島市中区紙屋町2-2-12)※現地開催のみ
・参加費 :無料
・対 象 :広島県に事業所をお持ちの企業
・主 催 :広島県・株式会社リバネス

<実施内容>

選定企業3社による成果報告

池田糖化工業株式会社

  • テーマ:エビ養殖業からの廃棄物を活用したエキス開発・販売
  • 活動国:マレーシア、インドネシア

粉末化や発酵技術を用いた調味料などの加工食品原料の製造を得意とする池田糖化工業。エビ養殖廃棄物を再利用したエビエキス開発による廃棄物削減を目指し、マレーシアとインドネシアで調査を実施しました。東南アジアの養殖業者と連携し、現地でエビエキスを製造し、現地と日本に販売する計画を立てました。当初はマレーシアを訪問調査しましたが、エビ養殖業者が出す廃棄物が安価な養鶏飼料として販売されていることが判明。インドネシアにて追加調査を進めた結果、エビ養殖管理を行う現地スタートアップJALA社の訪問にて、エビの頭の未利用資源が発生していることが確認できました。今後、インドネシアに焦点を当てて、エビエキスの試作やテストマーケティングに取り組む予定です。

卜部産業株式会社

  • テーマ:牡蠣殻由来土壌改良材による土壌改良と農業生産性向上
  • 活動国:フィリピン

牡蠣殻由来の肥料・飼料を製造・販売する卜部産業は、フィリピンの農地土壌改善と生産性向上に向け現地スタートアップとの連携を検討しました。長年、広島の牡蠣養殖場から大量に発生する牡蠣殻廃棄物の課題解決に取り組んでおりましたが、牡蠣殻由来の土壌改良材は、フィリピンにおける酸性土壌や化学肥料の過剰使用による低収穫量の課題も解決する可能性があると考え、フィリピン農業省や現地農家の訪問調査を行いました。結果、フィリピンには土作りの概念がまだ浸透しておらず、土壌改良の概念は関心高く受け入れられ、仮説の有効性が裏付けられました。牡蠣殻肥料を流通網に乗せるために、農産品の流通効率化を行う現地農業スタートアップMAYANI社と連携し、現地農家の教育も含めた連携を検討しています。今後は土壌改良材の普及とフィリピン全土での事業展開を計画しています。

清水化学株式会社

  • テーマ:グルコマンナンを活用した天然資源由来パッケージの強化・改善
  • 活動国:マレーシア

こんにゃく芋由来食物繊維であるグルコマンナンを食品原料等向けに製造・販売する清水化学は、グルコマンナンを天然資源由来パッケージの強化・改善に活用することを目指し活動しました。農業廃棄物を利用したストローを開発・販売するマレーシアのADA Biotech社と連携し、ストローの性能向上を目指した共同開発を行いました。サンプルを送り合いながら試験を重ねたほか、2月の現地訪問ではADA Biotech社の工場内で装置を用いた製造試験も行っています。また、マレーシア訪問に合わせて現地企業等を訪問し、ハラル認証の重要性やグルコマンナンが活用できそうな事例を発見することができました。今後は、ストロー以外のパッケージや食器への適用も検討しながら、さらなる海外市場展開を目指していきます。

特別講演 ADA Biotech Sdn. Bhd.

ADA Biotech社は、農業廃棄物をアップサイクルして生分解性の製品を開発する、マレーシア・ペナン発のスタートアップ企業です。現在はプラスチックストローの代替品となる100%天然素材由来のストローを東南アジア各国のカフェやホテルなどに提供しています。同じく生分解性のある猫砂や食器・カトラリー類も開発を行っており、今後は日本市場への進出も目指しています。

講演では、プラスチックゴミに関する課題や、農業廃棄物の有効活用の必要性についても触れられ、東南アジアでも環境・エネルギー分野への関心が高まっていることがわかりました。また、本事業を通して連携した清水化学への信頼度は高く、グルコマンナン技術の活用により高品質な製品開発を目指したいとの姿勢が示されました。本事例から、東南アジアのスタートアップと広島県企業との協力による新規事業創出の可能性と、環境・エネルギー分野への課題解決に向けた期待感が高まりました。

選定企業3社によるパネルディスカッション

今回のパネルディスカッションでは、マレーシア、インドネシア、フィリピンでの実証の活動について生の声を聞くべく、選定企業3社の担当者に登壇いただきました。

海外渡航前に参加した連携創出ワークショップでは、自社の理念や強みについて再度言語化するワークを行ったため、海外の政府機関やスタートアップとの面談の際にも大いに役立ったという声がありました。

実証当初に各社が立てた連携仮説については、仮説通りだった企業がある一方で、そうでなかった企業もあります。それもまたチャンスで、仮説を新たに立て直したり、精度が高まっていくものです。仮説通りだったとしても、海外現地での販路開拓や流通のための承認の必要性が明らかになりました。伴走支援を行ったリバネスグループのコミュニケーターと現地を訪問し一次情報を得る価値について、確認できました。

また最後に、自社社員の巻き込みに話題が移ります。実証の途中から、社内で報告プレゼンを行った企業もあり、本事業での具体的な動きを共有したことで社内理解の促進や活動メンバーの募集に繋がったようです。

同時期に海外での実証を経験した3社が共に語り合うことで、海外展開における第一歩目についてより具体的なイメージが共有されたパネルディスカッションとなりました。

事業期間終了後も、支援企業の3社は海外スタートアップとの連携による新規事業の創出に挑戦して参ります。