コミュニティ運営

スクラムひろしまロゴ

【開催報告】第2回 オープンセミナー「瀬戸内海で叶える再生可能エネルギーの未来」を開催しました

第2回 「SCRUM HIROSHIMA」セミナー

本年度オープンセミナー第2回を12月3日、コワーキングスペーストビオ(福山市西町)で開催しました。「瀬戸内海で叶える再生可能エネルギーの未来」と題した講演では、新たな再生可能エネルギー事業に挑む常石商事株式会社の津幡靖久副社長、独自の技術と知見を駆使して潮流発電の可能性を追求する株式会社ハイドロヴィーナスの上田剛慈社長にご登壇いただきました。今回は、会場27人、オンライン41人の皆様にご出席いただきました。
会場のワークショップでは講演の内容を参考にしながら、テーブルごとに自社で取り組んでいることやできることについてアイデアを出し合いました。

【講演1】
「常石グループが見据える環境ビジネス」 常石商事株式会社 代表取締役副社長 津幡靖久氏

福山市で海運業と造船業を軸に、エネルギー、環境、ライフ&リゾートなど多角的に事業を手掛ける常石グループ。グループの中で商社機能およびエネルギー関連事業を展開している常石商事は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、環境負荷低減と事業規模拡大の両立を目指しています。

「当社の収益基盤は鉄(船の鋼材やパイプ)と石油(ガソリンや船舶用の重油)の二つです。いずれもCO2排出量の多い事業であり、今後飛躍的に成長することは見込めません。石油にいたっては将来的にゼロになる可能性もあります」と津幡氏は危機感を募らせます。

今後、国内で半導体やデータセンターなどへの大規模投資による電力需要の増加が見込まれることから、同社は太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー事業に重点を置き、自家消費型太陽光システムの販売、余剰電力の自己託送やコーポレートPPA(電力購入契約)による電力供給事業に注力しています。また、地域で電力が不足している場所へ余剰電力を振り分ける仕組みを構築中です。同社の休業日に発生した電力をグループ会社の遊園地に供給するプロジェクトは、県の太陽光発電施設導入事業補助金にも採択されました。さらに、大型蓄電所の設置も視野に入れており、採算性などの課題をクリアした上で、2030年頃の実現を目指すとしています。

また、新たな再生可能エネルギーとして潮流発電にも着目しています。地元の瀬戸内海は世界有数の急流海域でありつつ波が穏やかなため、太陽光発電と比べても発電時間が長く、安定的な供給が期待できます。今年、潮流調査やシミュレーションを実施したところ、手間やコストなどの課題が多いことが判明しました。このため、同社はオープンイノベーションに乗り出し、株式会社ハイドロヴィーナスとタッグを組み、課題解決に向けて取り組みを進めています。「課題は山積していますが、最終的には島や港湾の電力を潮流発電で賄えればと考えています。地域特性を生かし、瀬戸内をクリーンエネルギーの先進地域にしたいですね。これにより雇用も生まれ、地域の活性化にも貢献できると思います」(津幡氏)

「環境ビジネスをどのようなチャンスと捉えているか」という会場からの質問に対し、津幡氏は「日本が蓄電池の分野で遅れを取っていることをふまえると、ものづくりについてはスピード感が重要です。ただし、私たちのように技術を導入する立場では、先取りしすぎても慎重になりすぎても良くありません。補助金も含め、行政の後押しを期待しています」と答えました。また、「再生可能エネルギー事業で、どのような企業と協業を望みますか」という質問に対しては、「たとえば太陽光発電では設備の施工のほか、潮流発電や蓄電池においても優れた技術を持つパートナーを幅広く求めています。私たちが持つ顧客との接点を生かして技術やノウハウを発揮したい企業様には、ぜひ当社にお声がけいただきたい」と、呼びかけました。

【講演2】
「水の流れと再生可能エネルギーで未来をつくる」 株式会社ハイドロヴィーナス 代表取締役社長 上田 剛慈氏

水流を利用した独自の発電技術「Hydro-VENUS」を開発した株式会社ハイドロヴィーナスは、岡山大学発のベンチャー企業です。ひろしま環境ビジネス推進協議会の新規事業創出プログラムにおいて常石商事株式会社のパートナー企業として採択され、瀬戸内海の潮流エネルギーを使った発電プロジェクトに取り組んでいます。

「水力発電というと水車のように回転するものを想像する方が多いと思いますが、私たちが編み出した装置は浮体型で、水の流れがあれば振り子を振動させて発電し続けます。大がかりな設置工事の必要がなく、プロペラのようにごみを巻き込まずに動き続けてくれるのも大きな利点です。サイズアップや台数増加で総電力量も調整できます」と上田氏は説明。このシステムは元々、河川や用水路で流速計や通信用の電源として使用していました。この技術を瀬戸内海の潮流発電に活用することについて上田氏は、「太陽光や地熱と違い、潮流発電は月の引力を利用します。月の軌道は先々まで読めるので、太陽光や風力に比べると安定性は抜群です。瀬戸内海には日本の潮流エネルギーが集中しています。また消費地から近いところに安定した電力があるというのは大きな魅力です」。

一方、実際に大型化して海に設置するにあたって、国交省や自治体への設置許認可、漁業権や周辺住民の理解などクリアしなければいけない課題は少なくありません。装置が強い水流に耐えられるのか等の技術的な問題やコスト面の不安もあり、一つひとつ解決しながら取り組んでいくといいます。 また、上田氏は分散型電源の重要性についても言及しました。分散型電源は、ドローンや衛星通信、漁業、養殖など、電線がなく人が立ち入ることができない場所で力を発揮します。潮流発電も、その一つとして海上や海中で活用できるかもしれないといいます。たとえば海上で自動計測や無線通信ができれば、データを蓄積してAIで赤潮や津波の発生予測などができ、データビジネスとして展開することができます。「水と通信、電力をつなぎ合わせると、あらゆる事業が関係し、様々な可能性が生まれます。ここにこそオープンイノベーションが必要です」(上田氏)

どのようなスケジュールで事業を進めていくのかという会場からの質問に対しては、「コストや耐久性など色々な課題を超えて行く必要がある。いきなり大きな発電所を作るのではなく、5年かけてセンサ電源から通信基地局電源、ドローン用受電ポートなど段階的に発電量を上げて需要を満たしながら、最終的に大型発電所規模を目指していきたいです」とお話しいただきました。

【グループワーク】

後半のグループワークでは講演の内容を踏まえ、自社で再生可能エネルギーに関してどのような取り組みができるか、テーブルごとにアイデアを出し合いました。
「環境ビジネスに対する考えや悩みなどを共有しました。ガス、リサイクル、リースなど普段接点のない事業者の方の視点を知る貴重な機会でした」
「再生可能エネルギーを利用したい企業、ファイナンスを使って再生可能エネルギー導入をサポートしたい企業など、活用方法も様々で興味深かった」といった感想をいただきました。

今回も多くのご参加、ご視聴ありがとうございました。次回は2025年1月28日(火)、広島市で経営者向けイベントを開催します。

ひろしま環境ビジネス推進協議会とは

広島県が2012年4月に設立した協議会です。企業間連携の活発化や海外展開の促進等を通じて、持続可能な社会の実現に貢献するビジネスをグローバルに展開できる企業群を育成することを目的としています。
協議会の活動の一環で取り組むコミュニティー組織 「SCRUM HIROSHIMA」では、多様なステークホルダーがつながり、新たなビジネスの可能性を探索いただく場として、定期的なセミナーや、交流イベントを開催します。

【役  員】
会長 早田 吉伸(叡啓大学 ソーシャルシステムデザイン学部 教授)
【事 務 局】
広島県商工労働局イノベーション推進チーム
【会員一覧】
ひろしま環境ビジネス推進協議会・参加企業一覧
【協議会サイト】
https://hiroshima-greenocean.jp/


ニュース一覧 | TOPに戻る