成果報告会は、支援企業として選出された3企業が今年度取り組んだ海外スタートアップなどとの連携によって創出した事業とその取り組みについてのプレゼンテーションを支援企業に行っていただきました。さらに、海外進出企業事例紹介として、Liberaware社の閔氏による特別講演と、昨年度事業の支援企業についても事業後の1年間の成果についてプレゼンテーションが行われました。
<実施概要>
<登壇した企業一覧>
オタフクソース
発酵技術により東南アジアでの未利用資源活用に貢献できるのではないかという仮説を持ち、廃棄物の利活用関心が高く、低い食料自給率という課題をもつシンガポールへと渡航しました。食品のアップサイクルを行うベンチャーを中心に訪問し、現地の食文化について体験した結果、高い糖尿病の罹患率という課題を再発見しました。いくつかのベンチャーを検討し、豆腐製造残渣を発酵して酒類の開発をしたSinfootechとの連携を行い、すでに醸造酢の試作品製造を開始しています。今後は海外ビジネスに向けた準備を進めていく予定です。
プラチナバイオ
バイオ燃料の原料であるアブラヤシをゲノム解析・編集して生産性を高めることで、サステナブルな資源調達を実現できるのではないかという仮説をもち、マレーシア、タイ、インドネシア、シンガポールに渡航を行いました。連携先をいくつか検討した結果、マレーシアのセンターオブガレージに拠点を置き、MPOBという遺伝子組換えや遺伝情報を取り扱えるラボや、Wetラボを持っている大学との連携を行うことにしました。今後はマレーシアのUniversiti Kebangsaan Malaysia(UKM大学)にラボを設置してビジネスを行っていく計画をしています。
寿マナック
東南アジアの未利用資源を活用したジャックフルーツ入りこんにゃく麺などの開発を行うことで、現地の課題である、肥満問題と現地農産物の大量廃棄問題の解決という仮説を持ち、マレーシアに渡航しました。現地渡航により、糖尿病の原因となる食生活やジャックフルーツの未利用資源を体感し、現地のムスリムを対象としたハラル認証付きのこんにゃく製品販売を行うこととしました。現地のスイーツ製造企業と連携してこんにゃくとジャックフルーツの未熟果を活用したスイーツの試作品開発を行いました。今後はハラル認証の取得と、試作品の開発・販売に取り組んでいきます。
また3社からの報告の後、合同での質疑が行われました。
Liberawareは「誰もが安全な社会を作る」をミッションに掲げ、狭所、暗所、での検査を可能にした小型ドローンの開発・製造を行うドローンベンチャーです。生活の裏側にあるような場所の安全点検だけでなく、3次元の図面化を同時に行うことができるため在庫管理なども行うことが可能です。
世界市場の大きさ、海外からの競合参入増加、諸外国での事業スピードの速さから、早期のうちに海外進出を考え始めましたが、その中でも意思決定の早さ、利益率の高さ、時差の少なさを東南アジア市場の特徴に挙げられるといいます。
市場参入の際は、事前調査、現地視察、戦略策定の3段階で行い、現地視察の際には議論のスピードに合わせて数日だけ渡航するのではなく、2週間程度しっかりと時間を作って話を進めることの重要性を強調しました。
本報告会では、2022年度の本プログラムにおいて実証プロジェクト設計を行った3社による、事業年度以降の活動の共有も行われました。
株式会社トロムソ
もみ殻から固形燃料を製造する装置の製造・販売を行うベンチャー企業。現在はバイオマスを炭化して、作成するバイオ炭の製造に取り組んでいます。炭素固定だけでなく、農業利用のためにベトナムの大学と一緒に委託研究を進めており、バイオ炭の供給だけに留まらない農業のやり方を提供し、多様な事業展開を狙いとしています。東南アジアでの経験を活かして、アフリカのマダガスカルでの事業展開を行っています。毎年のように海外展開を行えているコツとして、自社のリソースだけで全てを賄おうとするのではなく、リソースを持っているような企業や大学などとの産学連携を行うことが重要であると強調しました。
株式会社サタケ
稲作のポストハーベストを中心とした事業を行っている創業128年企業。2022年度の本事業においては米の副産物であるもみ殻の利活用を中心としたビジネスを展開することとし、マレーシアのNomatechや名古屋のTOWINGなどとの連携を進めました。事業期間後は、連携から学んだ事例を社内に広く展開することで、社内の意識改革や社内課題の深掘りを行いました。会社の中で、地球課題の解決というボトムアップで考えることが可能な新しい考え方をインストールすることで他の社員が新規事業を考えるきっかけができたといいます。いくつかのビジネスプランを試した結果、もみ殻からのシリカ抽出と、もみ殻燻炭による高機能バイオ炭製造の2つに絞って実証試験を進めています。このように、外との連携を試みた経験から社内の考え方の改革に乗り出した事例を紹介しました。
カネマサ製作株式会社
鉄道車両用機器、再生エネルギー装置、一般産業機械の製造・販売を行う福山の企業。大手企業から図面を受け取ってものを作る企業であったため、ものづくりの楽しみはあったが、ものを売る楽しみを感じてこなかったといいます。セミナーをきっかけに企業のミッションを定め、人々の笑顔のために技術開発をしたいと感じたといいます。2022年度事業では、フィリピンと日本では平均年収が3倍ほど違うのに電気代がほとんど変わらないという課題を解決するため、太陽光発電の効率向上に資する太陽追尾課題の現地導入を開始しました。また2023年度には令和5年度広島県環境・エネルギー産業集積促進補助金の採択を受けて、現地パートナーと共同で行った実証実験を進めました。連携のために必要なマインドとして意識改革と教育、柔軟性を持つことの重要性を語りました。
上記の活動報告会で5ヶ月間の中で、リバネスの伴走とともに創出した事業の成果報告と展望のプレゼンを行いました。これから支援企業の3社は海外ベンチャー等との連携を通じて海外ビジネス展開を行ってまいります。
本事業は次年度も継続して実施される予定となっておりますので、今年度事業をご覧になって興味が湧いた事業者の皆様は募集情報が出次第、ぜひ当Webサイトをご確認ください。